価格の査定はどのようにおこないますか?

不動産の価格査定については、以下のものを総合判断して導き出します。
・原価方式~それと同等のものを新築した際にどのくらいの費用がかかるか
・比較方式~それと同等の不動産がいくら位で市場に出ているか
・収益方式~その不動産を利用してどの程度の収益をあげられるか
また、現地調査でのポイントは以下のようになっています。
・建物
→日照、通風、外壁や基礎のひび、隣地との空間、天井クロスのしみや雨漏り、建てつけ、床鳴り、水周り設備の状況、排水、アスベスト等の建具建材、ひさしの越境
・土地
→騒音や近隣嫌悪施設、工場や店舗による土壌汚染、隣地の高低差(擁壁)、塀の越境、井戸、ごみ置き場
・マンション
→建物に加えて、お部屋の位置や天井高、スラブの高さ(パンフレット確認)、剛性感、上下音、エレベータ内や掲示板・エントランス・集合ポストの管理状態、駐車場や駐輪場の空き状況、インターネット環境
不動産には以下の4つの価格があり、これを一物四価と言います。
・実勢価格(時価)
現在の市況価格であり、宅地建物取引業者が媒介価格または評価額に対して意見を出す際にはその根拠を明らかにすることが義務とされており、その根拠としてつくられる査定書がこれにあたります(宅地建物取引業法第34条の2第2項)。また、宅地建物取引業者がおこなう価格査定はあくまで媒介業務を遂行するにあたってのものであり、不動産の鑑定価格についての法律に基づく鑑定評価とは違います。
・公示価格
国土交通省が掲げる1月1日現在の標準地の価格であり、公共用地取得や一般的な土地売買のひとつの指標のためにある算定基準です。
・路線価
相続税や贈与税を計算する際を土地価格となり公示価格の8割程度を占めます。
・固定資産税評価額
固定資産税、都市計画税、登録免許税を計算するときの価格であり、公示価格の7割程度を占めます。
その他の調査項目については以下の3つに注意します。
1.アスベスト
アスベスト(石綿)は昭和30年代から鉄骨建築物などの軽量耐火被覆材や住宅の断熱材、電化製品など様々な方面で使用され、耐熱性や耐薬性、絶縁性などの工業上の特性に対してとても優れています。しかし、その危険性が危惧されて昭和50年には吹付アスベストが原則禁止、その後はスレートやブレーキパット、保温材などの含有材料として使われてきましたが、現在製造・使用が全面的に禁止となっています。不動産において特に問題視されるのは飛散の恐れがある吹付けアスベストが使われているかどうかであり、これは一般住宅では使われている可能性は低いですが地下室や倉庫、駐車場などの鉄骨部分があるところでは使われている可能性があり、他には屋根材や外壁材、天井に防音・耐火ボード、床材などに使われている可能性があります。実際の売買のときには、アスベストが含まれているようであればその除去費用、解体費用を売主負担として売買金額から除かれるケースが多いです。
2.土壌汚染
土壌汚染がみつかり、土壌の飛散や地下水の引用等によって有害物質が体内に入る可能性があるときには、環境への影響を防ぐためにその経路を遮断する必要があります(平成15年2月土壌汚染対策法施行)。しかし、不動産の売却の際に必ず土壌汚染の有無を調べなければならないわけではなく、次の場合に限られています。
・有害物質を使用している工場や施設などを廃止するとき
・一定規模以上(敷地面積が3000㎡以上、改変面積が3000㎡以上のとき)の土地の改変(土砂の掘削や宅地の造成)をするとき
・人間の健康被害の恐れがあり調査命令が出たとき
・土地取引等のときに土地取引先から調査を求められたとき
ただし、次のような調査の猶予があるので注意しましょう。
・引き続き工事や事業場の敷地として使われる場合
・職住同居型の小規模な工場や事業場の敷地で引き続き当該設置者の住居用として使われる場合
・操業中や鉱業権の消滅後、5年以内の鉱山の敷地(ただし鉱山保安法に基づき措置が適格になされている場合)
この調査は環境大臣の指定をうけた調査機関に委託しなければなりません。また、土壌汚染の有害物質の濃度基準には土壌含有量基準と土壌溶出量基準が規定されており、この基準に当てはまらない土壌を基準不適合土壌といいます。調査によって基準不適合土壌が発見された際には対策をしなければならない状況か判断され、法や条例においては有害物質が体内へ取り込まれて健康に影響がある場合は、健康影響を防止する対策が必要です。汚染状況や施工条件によって違いますが、各対策の費用の目安は以下のようになっています。これらの対策費用も事前に調査し、売主負担で売買金額より控除されることが多いです。
・土壌含有量に適合しない土壌があり、人が土壌に触れる危険性がある場合
対策:塗装、盛土、掘削除去
費用:塗装・盛土(数千円以上/㎡)、掘削除去(5~10万以上/㎡)
・土壌溶出量基準に適合しない土壌があり、周辺に地下水を飲むための井戸などがあり人が有害物質を含む地下水などを飲む危険性がある
対策:原位置封じ込め、掘削除去、原位置浄化(生物的分解)
費用:原位置封じ込め(3~5万以上/㎡)、掘削除去(5~10万以上/㎡)、原位置浄化(生物的分解)(1~3万以上/㎡)
3.ハザードマップ(浸水被害等)
各行政官庁はホームページに多くの情報を公開するようになり(行政機関情報公開法施行)、国土交通省のホームページには水害等の自然災害に対するハザードマップが公開されています。このハザードマップとは、概ね200年に1回程起こるであろう大雨をシュミレーションし、浸水の予想される区域や浸水の程度、避難所などが記されています。また、地震防災マップとして、マグニチュード6.9・震源の深さおよそ10㎞を想定する直下型地震がおきた際の震度分布や揺れやすさ、危険度を視認化したものもあり、査定・取引時にはこのような点についても考慮していきます。

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